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名前をつけてやる / スピッツ















「ウサギのバイクで逃げ出そう」―。
このスピッツの傑作2ndは、この時期のスピッツを象徴するような、このフレーズで始まる。

何が言いたいかというと、時は伝説の1991年、バンドブーム末期で渋谷系全盛にあった日本において、海外のオルタナ勢と共振していながら、唯一無二の個性を発揮していたのは、実はスピッツだけだった、という話。

適度にエッジーなギターに乗せて歌われる、この
「やりたいことなんて別に無いし、めんどくさいから逃げちゃお。
車も中免も持ってないけど、この原チャならあの娘も『かわいー』とか言って付いてきてくれるかなーあはーあははー(妄想)」
というメンタリティ。
これは、まさに日本からのシューゲイザーへの回答だ。

同時期、ダイナソーJr.は少しだけ涙を浮かべながら、全てを轟音で吹き飛ばそうとした。
ニルヴァーナは、全てを吐き散らかすだけ吐き散らかした。
マイブラは轟音で身を包みながら「アタマがまわるーぐるーんぐるーん楽しいなーわーい」という感じだった(?)。

そう、ここには確実にシンクロニシティがある。

国民的バンドとして覚醒する前夜、スピッツが本物のオルタナティブ・バンドだったことを証明する傑作。
中でも「ベッドの上ずっと2人でまどろんでいた、あの永遠の夏」を閉じ込めたような「プール」が白眉。


ただ、本作はその「永遠のまどろみ」であるだけでなく、最終曲「魔女旅に出る」において

「僕は一人いのりながら 旅立つ君を見てるよ / いつでもここにいるからね」

というラインで、モラトリアムを投影するリスナーの背中をそっと押すような構成になっているのも、特筆すべきポイントかなと。
by fa60453 | 2008-07-06 23:08 | うんこレビュー
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