カテゴリ:うんこレビュー( 75 )

サンシャイン / HiGE














アートワークの焦点がイマイチ定まってない時点でなんとなくわかってたんだけど、「青空」が聞きたくて買ったHiGEの新譜。
土屋昌巳プロデュース曲の繊細さも奥田民生プロデュース曲の絶妙なゆるさも素晴らしいのに、今回も結果散漫な印象を拭えない残念なアルバム。
名曲が4曲(「青空」「サンシャイン」「テキーラ!テキーラ」「三日月」)あるというのも難しいところで、長く聞き続けられるアルバムというのは往々にして2曲程度のキラートラックと統一感さえあれば良いのだ。

しかしなあ。出来から考えて「テキーラ!」はまだしも、ひねりのないニルヴァーナな「ペインキラー」をここに入れた意味はほんとにわからん。金子某が参加したとかいう話題づくりか、おい。などと邪推してしまいました。

曽我部さんが「ハピネス!」~「本日は晴天なり」を経て、(多分メロウな)ソロ・アルバムを出すことを踏まえて、「青空」と「三日月」の素晴らしさを考えると、須藤さんのソロアルバム聞いてみたいなーとも。




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by fa60453 | 2010-07-21 01:50 | うんこレビュー

[All Time Favorite] Oh! ベスト / 岡村靖幸

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岡村ちゃんこと岡村靖幸のシングルを発表順に並べたベストアルバム。

彼のキャリア絶頂期はバブル全盛と見事に重なっている。そこにあるのは他を寄せ付けない恐ろしいほどのクオリティと、無邪気さだ。

文化は生きていくにあたって必要のない無駄なもの。でもその「無駄」こそが文化というものである、という考え方からすれば、彼の音楽は、幸福な時代に余裕があったからこそ生まれた、数少ないホンモノだった。

そして残酷なことに、アルバム後半(Disc 2の後半)は、それらが次第に失われていくドキュメントとして機能してしまっている。

トピックとしてはバブル崩壊、オウム、援助交際などがあげられるだろう。
それに並走するような91年以降の寡作状態。そして体型同様ファットで硬質になっていくビートと、シリアスな描写や単なるノスタルジーが増えていく作風。これはもう、聞いていて悲しくなるほど多くを物語っている。彼は私生活においても、この国同様、ボロボロでグダグダになってゆく。

しかし、彼が諦めたことは(少なくとも音楽の中では)一度も無かった。
いくらか鈍重にはなったが、曲の「キレ」は今も失われてはいない。

かつての彼は小指を立て、あり得ない明朗さで「君がだいすき 甘いチョコよりも/こんなに大事なことは そうはないよ」と歌っていたが、ラストに収録された「真夜中のサイクリング」(2000年)では、その過去が嘘のようなゴモゴモとした歌唱で、こんな歌詞が歌われる。
「ジャンパーの袖にしがみつけよ 命がけの恋が世の中を救うよ」

これをして「時代に対応できない残念な大人」と言うことも可能だろう。だが、「ジャンパー」はもはやノスタルジーですらなく、彼の悲痛な祈りだ。

下らないピュアリズムに、どうにも時代をうまくサーフィン出来ないこの「残念な大人」の音楽に、出会ってから6年経った今も、僕はどうしても心を動かされてしまう。

一生聞く。

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by fa60453 | 2010-06-10 03:30 | うんこレビュー

風街ろまん / はっぴいえんど














~久々にいじってたら、昨年マサ太郎ブログに寄稿した「風街ろまん」のレビューの為の試行錯誤の跡が残っていて、なんか色々酷いので載せてみます~


「ああ、これな。なんやっけ。なんか、ハッパで捕まったんちゃうかったっけ、誰か。全然ハッピーちゃうしwwハッピーかノリピーか知らんけどwwwwwwえ?黙れ?わかったわかったごめんごめんwwで、これが歴史的名盤なん?はー、そう。

このジャケットって、バンドのメンバーなん?え?知ってるわ!だって全員有名やん。
あれやろ?左上から時計回りに、嵐の二ノ宮くん、元ジョビジョバのなんか俳優やってる人、元日本代表DFの横浜F・マリノス松田、で、K-1の武蔵やろ?
え?一人も合ってへん?知らんし!!てか誰やねんはっぴいえんどて!!
まぁせっかくやし、どうせクソやろけどちょっと聞いてみたってもええでww暇つぶしにwwww

……なんか、暗ない?フォーキーっていうか。「四畳半」って感じでもないけど、こう、和製ホラー映画にも通じる独特のジメジメ感っていうか。
あと、やたら「ですます」調やな。なんの報告やねんw誰もお前に聞いてへんっちゅーねんww!

え?殺す?わかったw!わかったからww!冗談やんか~怒んなや~~も~~。
……でもこの言葉の感覚っていうか、小難しい言葉とか見たこと無い漢字とか、mihimaru GTを愛するおれにはよーわからんわ。なんなん、「摩天楼の衣擦れが歩道を浸すのを見た」ってこのスカしくさった歌詞。
そんなもん、こう言うたらええやんけ、えーと…ほら…摩天楼やからあれや……ってどうでもええわしょうもな!!え?絶妙すぎて言い換えられへんかっただけやろって?ちゃうわ!要はあれやろ、「なんか気分上々やからヘイDJ!ゆーて、かわせイェイイェイイェイ」みたいなことやろ。何がちゃうねん!!ほぼ一緒やろが!!!!

まぁそれは置いといて、これってそもそもどういうコンセプトで作られたアルバムなん?
「失われた東京を架空の都市に見る」?また、よーわからん・・・。
え?日本のポップスはほぼこのアルバムの影響下にあるって?ほんまかいな!?
山下達郎?ユーミン?シティ・ポップス?AOR?
ああ、ちょっとわかったわ。都市生活のBGMみたいな?その原型やったってことか。
まぁ今となってはほぼ絶滅したジャンルやけどなww

え?それだけじゃない?サニーデイ・サービス?他にもたくさん?
それはでも、ある種レア・グルーヴ的な聞き方なんちゃうん?それ90年代やろ?

でも、そういえばこないだの日本版ローリング・ストーンかストーン・ローゼズか石野真子かなんか知らんけど、日本のロック名盤ランキングで一位やったしなぁ。あ、うんそれは知ってんねん。
要はあれやろ、ある時期まではどうしたって最終的に真ん中に来てまう作品やったってことやろ、中身は置いといたとしてもw
中身もええって?まぁ「風をあつめて」とか「夏なんです」とかは今聞いてもええ曲やけどな。
でもまあやっぱ、おれはmihimaruの方がええけどな!!!!!!!!!!」



~完~
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by fa60453 | 2010-03-03 03:53 | うんこレビュー

ナポレオンフィッシュと泳ぐ日 / 佐野元春















曽我部恵一Bandの「ハピネス!」に通低する、重い現状認識。それを聴いてしまった後では、佐野元春の音楽には、どうしても80年代的余裕が感じられてしまう。マサ太郎氏が指摘していたように、傑作と名高い「Visitors」においては、そのある種の気楽さのようなものが特に顕著に表れていて、今聞くと割と辛い部分があったりする。(もちろん、それはあのアルバムの一つの側面にすぎないけれど。)

しかし、そんな風に思ったことがあるのならば、このアルバムを聴いて欲しい。
彼のキャリアを全て追った訳ではないけれど、断言したい。このアルバムこそが彼の最高傑作であると。

ニューヨーク、パリ、ロンドン。「Visitors」以降、彼のキャリアは異文化に身を置くことで自らを相対化することに費やされたけれど、アルバムの1曲目、躁に近いアッパーなタイトルトラックで彼は自らの現在地について、「どこか行きつく所もなく」と吐露するに至っている。曲が進むに連れて歌詞は次第に内省的になってゆき、中盤、「おれは最低」「ブルーの見解」「ジュジュ」といった楽曲群では、知性と情熱の隙間から、悲しみや感傷が隠す間もなくぽろぽろと零れ落ちている。この部分こそがこのアルバムの最大の魅力であり、引いては佐野元春というアーティストのもっともチャーミングな瞬間だろう。



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by fa60453 | 2009-10-24 03:49 | うんこレビュー

10 / Cali≠Gari















再びメイクして戻ってきたカリガリ。シングル「9」を挟んで6年ぶりの新作。
「第7実験室」「8」と同じく、石井秀仁がほとんどの曲の主導権を握り、桜井青の作品は共作も含めて4曲に留まっている。

「安っぽいスリルだけど無いよりはマシ」
「凡庸の芸術はなんだか知らねえけども金の匂いがして」
「居心地は最悪だけれどどうやったって戻されちまうし 因果因果因果 これが因果だ」
「なんといっても奴らは肥えてる 耳は腐ったゴミでも 目にはいつだって何匹もの星を飼って日々増殖」
「空色のバスはいっちまったけど」
「今じゃ夢なんてやめたさ。息も吐かずに同じ孤独を生きよう。」
「巡る季節を売る度に、一つ思い出作ります。」

歌詞は概ねこんな感じで(あとは大体ヤケクソ&ナンセンス)、両者ともに中年の危機、行き詰まり、再結成の白々しさなんかについて歌っている。アートワークの健康器具は、これは体調を整えるためのただのエクササイズ(=金儲け)ですよ~あはは、という皮肉に他ならない(多分)。音楽的接点はほとんど無いものの、2人の気分は「閉塞感」「商業主義の下らなさ」という点で見事にシンクロしている。

しかし、それでもというか、相変わらずというか、曲の出来は悪くはなく、岡村詩野先生をして「それなりの切れ味がある」と言わしめるほど。シングル曲「-踏-」は、一般受けも良さそうなヘヴィなリフものでそれなりに商業的目配せがあるし、石井得意の80'sフレイバーの「ハラショー!めくるめく倒錯」なんてクオリティ的にはニルギリス辺りなら凌ぐほどの出来。唯一、桜井作曲の「スクールゾーン」は、ファンの求める「これぞカリガリ!」な曲だけど、石井のシンセがきちんと活躍。全体的には2009年版にアップデートされたカリガリ、という感じ。

何より、こないだのユニコーンみたいなお祭り感が徹底的に排除されていて、ちゃんと「8」の続きを作ってくれたことが嬉しい。正直に「アルバム」を作ってくれていることが嬉しい。個人的ベストトラックはYMOの「U・T」をインダストリアル~ジャスティスな感じで現代的にした石井の「飛煌者読誦」と、桜井の筆による、カリガリ的トロピカリア「電気睡蓮」。

復活は「賞味期限付き」ということだけれど、この閉塞感の先は、確実にあるはず。
何年後かでいいから、もう一枚は作って下さい。

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by fa60453 | 2009-09-03 03:16 | うんこレビュー

8 / Cali≠Gali














桜井青と石井秀仁。
V系全盛期のシーンにおいて、異型かつ破格の才能を持っていた2人を擁する伝説のバンド、カリガリ。

彼らは「メイクするのは売れるため」「この音楽をこのシーンでやることに意味があるんですよ」などと発言し、歌詞では同業者批判を繰り返した。つまり、シーンへの愛情と憎悪でいっぱいだった。

これは、日本のポップミュージックシーン最重要人物の一人、鈴木慶一をプロデューサーに迎えて製作された2003年発表のアルバム。

おそらくは音楽だけで勝負できる自信があったのだろう。
アートワークでは、陰鬱でゴシックなビジュアルやこれまでの~実験室というタイトルをやめ、ナチュラルメイクのメンバーが青空の下でTシャツを干している。

日本文学や歌謡からの影響を時に陰鬱に、時に繊細に音楽に落とし込む、数少ない「本物」の匂いがプンプンする、桜井の曲。(彼はゲイである。)
ニューウェーヴやレフトフィールド・ポップにルーツを持ち、大胆な打ち込みも駆使する、石井の曲。
様々な曲調を難なくこなす優秀なリズム隊。

鈴木という師を得た石井の曲が水を得た魚のように生き生きと躍動している反面、桜井の曲は精細を欠いているが、ラストトラックの名曲「青春狂騒曲」が描く晴れやかな情景は、なにか吹っ切れたものを感じさせる。
このエゴとエゴのぶつかり合いから生まれる、壮絶でありながらも本物の美は、まさにカリガリ版「ホワイトアルバム」とでもいえよう。
「音楽の力」で下らないジャンル分けから解き放たれた彼らはこの瞬間、間違いなくただのロック/ポップ・ミュージシャンだった。

このアルバムをもって無期限活動休止。

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by fa60453 | 2009-08-26 00:37 | うんこレビュー

Tonight / Franz Ferdinand














2ndの性急なギターロックから一転、ギターはかなりの割合でシンセに取って代わっている。流行っちゃ流行なんだけど、ミーハーなだけではなく、どこを切ってもフランツ印がしっかりと刻まれているところはさすが00年代「踊れるロック(なんだそりゃ)」の先駆者。

強調された腰にくるベースの音と、ぐっと抑制されたBPMで誘うストーリーは、ちょっと惨めで、切ないロマンス。そして孤独、孤独、孤独。
ぐっと大人っぽくなったフランツの3rdは、どんな夜でも彩ってくれる、上質のサウンドトラックでござい。

しかし彼らは芸人魂を忘れない。
インタビューでは「ま、僕が一番踊るのを楽しめるのは、カーテンを閉めきった部屋のベッドの上で、一人で踊る時なんだよね(笑)。ベッドの上でとんぼ返りしたりするんだ(笑)」という発言も。わかるなー笑。
ブラーのデーモンは例えそうであっても、多分こんなこと言えないよね。(それが彼のチャームでもあるんだけど)

「ZAZEN BOYS4」の「The Drifting~I Don't Wanna Be With You」をよりセクシーにした感じ(?)でとってもヤバイ「Lucid Dream」からチルアウトしていくラスト3曲の流れがとても良い。
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by fa60453 | 2009-07-25 01:09 | うんこレビュー

魂のゆくえ / くるり














日本のロックシーンを見渡して、ここ10年間の若手バンドの中で最も「偉大なバンド」はくるりでしょう。異論は認めません。ていうか、ある?

駄作無し、かつ、どのアルバムでも何らかの挑戦や新しい価値観があるくるりのアルバムですが、一番好きなものは?という問いがあったとして、皆さんは何と答えますか?
おれは「ベストアルバム」です。え?反則?うるさいな!だってそうなんやもん!

ベスト(Tower Of Music Loverね)の「リバー」~「ハイウェイ」~「飴色の部屋」~「赤い電車」の流れが自分がくるりのことを好きな一番の理由だ、ということを言っていた知り合いがいてね。その時の俺は、もうX JAPANのバンギャのヘドバン並みの勢いでうなずいたね。ここはほんとに、何回聞いても泣くね。

で、このアルバム。
曲の骨格の中にピアノがある「夜汽車」「つらいことばかり」「さよならリグレット」「かごの中のジョニー」「魂のゆくえ」(あとボートラ扱いの「三日月」も)が曲としては出色だと思う。逆に、ニューヨーク録音の岸田ギターが前面に出た曲たちはちょっと解釈が難しい。ブルース、カントリー、その他ルーツ・ミュージックをさらっとやれるのはすごいと思うんだけど、全然ドキドキしない。達身さんがいなくて、オーケストラがなくて、ピアノもない、さあどうしよう、という消去法の果ての選択だったのかな。その飾りの無い分、バンドのコアが表出している、というのが今回のうたい文句にはなってますが、うーん。

ただ、最終的にその「コアの部分」、もっと言えば歌詞でまとめたアルバム(らしい)なので、まとまりは悪くない。ていうか、考えてみればおれがくるりを好きな理由、前述のベストの曲の並びって、「孤独」「旅立ち」「ポップに殉ずる」というくるりのコアにあるテーマを凝縮させたような曲なんですよね。

なので、「魂のゆくえ」は、「うーん、好き…かも」という、女の子に言われたらムチャクチャドキドキしそうなことを言ってしまいそうになるアルバムで、ドキドキすんのかしないのか、好きなんか嫌いなんかどっちやねんハッキリろやボケ、と思わず口に出して聞いてしまいそうになる、恋愛初期の一番楽しい部分のような気持ちになるアルバムです。
なんやそれ。よくわかりません。でもよく聴いてます。
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by fa60453 | 2009-07-19 01:10 | うんこレビュー

三文ゴシップ / 椎名林檎














いくつかの傑作シングルを除いて、個人的にはよくわからなかった、もっと言っちゃえば駄作続きだった東京事変はただの延命措置だったとしか思えない。ただ、バンドや映画のサントラ、数々のコラボレーションで培ったであろうアレンジの妙がここではかなりの高みに達している。それはまるで、虚構ではないディズニーランドを音楽の力で創造しようとしているかのよう。

そして特筆すべきは、その辺の女子大生を喜ばせそうな内面をほじくり出した扇情的な唄ではなく、明らかに社会的なメッセージを歌おうとしていること。今彼女の興味は完全に外へ向いている。


Well you design the vogue, I just ride
All you think is win, it makes me cry
You play the hero in wars you start
And I shed a tear from one blind eye

「流行」

一体いくら掛かるの
気持ち良い生活まで
とても間に合わない
身体と時間が‥無い

(中略)
したいこと見付からない
嘆いては恰好付かない
怒ったように慎め口
上は見ないぜ
したいことだけしてたい
悪いのは何奴だ顔見せな
始終くだを巻いていても
お願い夢を見させて

「労働者」

生きているうちはずっと句だと
そう裏付けて
充たして
いまを感じて覚えて何時もより
生きて、生きて、活きて居よう

「旬」

お腹が空いて考える
さあ何を犠牲に満たそう
喉が渇いて考える
さあ誰に恵んでもらおう
どうにも差し出せる品が無い
あなたもそうでしょ?嗚呼!

「凡才肌」

身体ごと使い切って孤独の極みを視よう
嫌われて御出でよ
向かい風、乾杯!
帰れない、今日は帰れない
独りぼっち“同志”
きっと又逢えると笑ってよ
それを糧に生きるさ
君が生モノだから

「余興」


これはニートとか派遣切りとか不景気とかグローバリズムとか、そういう問題に対する彼女なりの回答であると言っていいんじゃないでしょうか。当然ボーナストラックは「♪報酬は入社後~」になるわけです。
「生命の輝き」にメッセージが帰結しているのを見ると、「キラキラ!」とか言ってたバンドが頭をかすめますけどね。はは。


この人のプロフェッショナリズムはこのところずっとしんどそうに映っていたけど、こうやってバランスの取れた作品を出されると、全てのポップ・ミュージシャンは彼女を見習わないといけないな、と思うんじゃないでしょうか。敢えて文句つけるなら、「ありあまる富」がアルバムに収まっていればなぁーと。でも傑作。
やっぱり今年は邦楽いいです。

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by fa60453 | 2009-07-16 23:55 | うんこレビュー

Live 2009 "THE BEST" / 安藤裕子



















6/21 at 大阪国際会議場メインホール


以前、音楽ライターの宮園龍氏が、雑誌「MUSICAでこんなレビューを書いていた。
「安藤裕子の音楽は都会に生活する者たちの小さな背中をそっと後押しする。この音楽を愛する人たちが幸せになればいいなと思う。」(シングル「パラレル」のレビュー)
僕はハッとして、思わず泣きそうになってしまった。

リンク先のブログ「Music For Life」で、管理人のマサ太郎くんが彼女の音楽を「『あなたと私のふつうのこと』がこの上なく愛しく奏でられる」と評していた時にも、僕は同じような感動を覚えたのだった。

安藤裕子は元女優。ウワサによると、ええとこのお嬢様である。
類まれなる歌声と端麗な容姿を持ち、ファンの誰もが彼女のことを「憧れ」として見ている。
が、音楽的知識は現在に至るまでほぼ素人同然。
「音楽は聴かない」と公言。(正直これはどうかと・・・。)

ただ彼女は音楽の中で、誰かと出会い、共に居れることの喜びやいつか訪れる別れの気配を感じながら、笑ったり泣いたりしている。そう、僕たちと同じように。

「あなたと私の普通の日々」を、彼女は彼女なりのやり方で極彩色に彩ってみせようとする。それを日本屈指のミュージシャンたちが優しく微笑みながら後押ししたり、ほったらかしたりすると「安藤裕子」の音楽になる。それはは社会的指標に対する安っぽい根性論や、どこにあるんだかわからない安心感を売るようなものではない。

この日のクライマックスが本編ラスト2曲に演奏された「隣人に光が差すとき」~「聖者の行進」だったことを否定する人は少ないだろう。

「隣人に光が差すとき」の主人公は、夢を掴んだ「隣人」の姿に打ちのめされてしまい、そんな過去の自分を「ヤワすぎた」と回想する。そして「聖者の行進」では、覚束なくも力強い足取りを始める主人公に、パイプオルガンの聖なる光が差し込む。「君が細い腕を差し伸ばすのなら、この身を世界に捧げてもいい」と彼女は歌う。

個人、個人、個人、の時代に、彼女は何に反抗するでもなく、何を癒すでもなく、自分がその手で掴みたいもの、その為に小さな羽根で飛ぼうとする。

今までに見たライヴでは、この曲たちの熱量のベクトルはあくまでも自分自身に向いていて、それはあたかも自らを奮い立たせるような、必死に呼びかけるような歌だった。

しかし今回、その熱量の半分は、確実に客席に向いていた。客席まで届いていた。秀逸な照明も手伝って、僕は泣くこともできず、ただただ圧倒されてしまったのだった。

絶妙な揺らぎを持つ彼女の歌声は、その不安定さも大きな魅力となっていた節がある。しかし今回は、それ以上の力強さがあった。羽根はいつの間にか、立派で大きなものとなっていたのだ。

「普通」の彼女がそうやって歌うことは人間の生命を肯定することとイコールで、だから僕は彼女の音楽が大好きだ。
歴史的な名盤なんて発表してくれなくていい。彼女がそこにいて、唄ってくれているだけでもうじゅうぶんなのだ。




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by fa60453 | 2009-06-22 03:06 | うんこレビュー