三文ゴシップ / 椎名林檎














いくつかの傑作シングルを除いて、個人的にはよくわからなかった、もっと言っちゃえば駄作続きだった東京事変はただの延命措置だったとしか思えない。ただ、バンドや映画のサントラ、数々のコラボレーションで培ったであろうアレンジの妙がここではかなりの高みに達している。それはまるで、虚構ではないディズニーランドを音楽の力で創造しようとしているかのよう。

そして特筆すべきは、その辺の女子大生を喜ばせそうな内面をほじくり出した扇情的な唄ではなく、明らかに社会的なメッセージを歌おうとしていること。今彼女の興味は完全に外へ向いている。


Well you design the vogue, I just ride
All you think is win, it makes me cry
You play the hero in wars you start
And I shed a tear from one blind eye

「流行」

一体いくら掛かるの
気持ち良い生活まで
とても間に合わない
身体と時間が‥無い

(中略)
したいこと見付からない
嘆いては恰好付かない
怒ったように慎め口
上は見ないぜ
したいことだけしてたい
悪いのは何奴だ顔見せな
始終くだを巻いていても
お願い夢を見させて

「労働者」

生きているうちはずっと句だと
そう裏付けて
充たして
いまを感じて覚えて何時もより
生きて、生きて、活きて居よう

「旬」

お腹が空いて考える
さあ何を犠牲に満たそう
喉が渇いて考える
さあ誰に恵んでもらおう
どうにも差し出せる品が無い
あなたもそうでしょ?嗚呼!

「凡才肌」

身体ごと使い切って孤独の極みを視よう
嫌われて御出でよ
向かい風、乾杯!
帰れない、今日は帰れない
独りぼっち“同志”
きっと又逢えると笑ってよ
それを糧に生きるさ
君が生モノだから

「余興」


これはニートとか派遣切りとか不景気とかグローバリズムとか、そういう問題に対する彼女なりの回答であると言っていいんじゃないでしょうか。当然ボーナストラックは「♪報酬は入社後~」になるわけです。
「生命の輝き」にメッセージが帰結しているのを見ると、「キラキラ!」とか言ってたバンドが頭をかすめますけどね。はは。


この人のプロフェッショナリズムはこのところずっとしんどそうに映っていたけど、こうやってバランスの取れた作品を出されると、全てのポップ・ミュージシャンは彼女を見習わないといけないな、と思うんじゃないでしょうか。敢えて文句つけるなら、「ありあまる富」がアルバムに収まっていればなぁーと。でも傑作。
やっぱり今年は邦楽いいです。

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# by fa60453 | 2009-07-16 23:55 | うんこレビュー

最近は
















最近はこんな感じ。邦楽ディグブームはまだ続きます。


ソカバンのライブに行った。2ndは明らかに問題作だったけど、ライブはそれを補って余りある凄さだった。ほんとに凄かった。時代に真っ向から殴りかかっていた。隣にいた彼女は2曲目で既に泣いていた。そこのあんたも見たほうがいいよ。ほんとに。このライヴについてはもっと言いたいんだけど、これ以上はなんかまだ言葉にできない。

終わってラーメン食ってその辺をプラプラ歩いていると、ライブハウスの前で曽我部さんに遭遇。勇気を出して手を振って「めっちゃ良かったっす」と告げると、若干怪訝な顔で「ありがと~」。ははは。ほんと楽しかった。





この前バイト先に会社の部長が来ていた。彼は休憩中ずーーっと雑誌「Groove」を読んでいたので、「DJやってるんすか?」と話しかけると、にや~っと笑う部長笑。そこからレジ閉め作業をしている間中、山下達郎やはっぴいえんど、ジャズの話、12インチの素晴らしさ、ディグの楽しさ、ダウンロードのくだらなさ、などなどで盛り上がった。さらにおっさんは止まらない。少年のような笑顔で、少し恥ずかしそうな表情で、机の上の資料をほっぽりだして話に興じる。ああ、年取ってもずっと音楽好きでいていいんですね、部長!!
しかし、俺はお金の入力を間違ってしまい、次の日に部長から「おまえ、コラ!」と怒られた。いや、あんたの話に付き合ってたせいだろ、とも言いたかったけど、まぁ仕事は仕事ですよね。すんませーん。

TOEICの勉強をしたことや、昔の仲間の結婚式の司会や、新しいバイトの人たちとファミレスでお互いを探りあいながら色々話をしたのも本当に楽しかった。俺のB型論は面白いらしい。あの時感じた朝の空気の気持ちよさ、新しい風の心地よさ。小さなコミュニティに安住して充足感を得ることのなんと下らないことか。


夏が来ますね。果たして俺は卒業&就職できるんでしょうか。
お金がないからフェスとか行けるかどうかわからんけど、楽しいことや新しいことをたくさんしたいな、と思う。
この曲とか聴きながらドライブしたら、最高やろなー。
クサすぎるか。いや、そんなことない。この「Baby・・・」の歌い方は日本最強。
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# by fa60453 | 2009-07-13 19:02 | 雑記

トウキョウソナタ














崩壊していく家族の日常、それぞれに突然起こる非日常、訪れる逸脱へのチャンス、それを放棄し日常へ戻り、家族で囲む食卓。そこに宿るカタルシス!
「食べる」ということは「生きる」という力の象徴だ。

そしてラストに描かれる希望。ベタな感動に収まってしまってもおかしくないあんなモチーフを、よくもまあ。
ゾクゾクするようなカットも多数。さすが黒沢清。すげーもんみた。
でも、役所広司は違う人のほうが良かったかも。(ちょっと三谷幸喜的コミカルさが出てしまっていて、それはあの役には不必要だと思った。)

椎名林檎の「ありあまる富」やこの「トウキョウソナタ」。
日本の現代社会に蔓延する病理への回答の一つとして、素晴らしい傑作だと思います。



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# by fa60453 | 2009-07-10 00:31 | 映画

Live 2009 "THE BEST" / 安藤裕子



















6/21 at 大阪国際会議場メインホール


以前、音楽ライターの宮園龍氏が、雑誌「MUSICAでこんなレビューを書いていた。
「安藤裕子の音楽は都会に生活する者たちの小さな背中をそっと後押しする。この音楽を愛する人たちが幸せになればいいなと思う。」(シングル「パラレル」のレビュー)
僕はハッとして、思わず泣きそうになってしまった。

リンク先のブログ「Music For Life」で、管理人のマサ太郎くんが彼女の音楽を「『あなたと私のふつうのこと』がこの上なく愛しく奏でられる」と評していた時にも、僕は同じような感動を覚えたのだった。

安藤裕子は元女優。ウワサによると、ええとこのお嬢様である。
類まれなる歌声と端麗な容姿を持ち、ファンの誰もが彼女のことを「憧れ」として見ている。
が、音楽的知識は現在に至るまでほぼ素人同然。
「音楽は聴かない」と公言。(正直これはどうかと・・・。)

ただ彼女は音楽の中で、誰かと出会い、共に居れることの喜びやいつか訪れる別れの気配を感じながら、笑ったり泣いたりしている。そう、僕たちと同じように。

「あなたと私の普通の日々」を、彼女は彼女なりのやり方で極彩色に彩ってみせようとする。それを日本屈指のミュージシャンたちが優しく微笑みながら後押ししたり、ほったらかしたりすると「安藤裕子」の音楽になる。それはは社会的指標に対する安っぽい根性論や、どこにあるんだかわからない安心感を売るようなものではない。

この日のクライマックスが本編ラスト2曲に演奏された「隣人に光が差すとき」~「聖者の行進」だったことを否定する人は少ないだろう。

「隣人に光が差すとき」の主人公は、夢を掴んだ「隣人」の姿に打ちのめされてしまい、そんな過去の自分を「ヤワすぎた」と回想する。そして「聖者の行進」では、覚束なくも力強い足取りを始める主人公に、パイプオルガンの聖なる光が差し込む。「君が細い腕を差し伸ばすのなら、この身を世界に捧げてもいい」と彼女は歌う。

個人、個人、個人、の時代に、彼女は何に反抗するでもなく、何を癒すでもなく、自分がその手で掴みたいもの、その為に小さな羽根で飛ぼうとする。

今までに見たライヴでは、この曲たちの熱量のベクトルはあくまでも自分自身に向いていて、それはあたかも自らを奮い立たせるような、必死に呼びかけるような歌だった。

しかし今回、その熱量の半分は、確実に客席に向いていた。客席まで届いていた。秀逸な照明も手伝って、僕は泣くこともできず、ただただ圧倒されてしまったのだった。

絶妙な揺らぎを持つ彼女の歌声は、その不安定さも大きな魅力となっていた節がある。しかし今回は、それ以上の力強さがあった。羽根はいつの間にか、立派で大きなものとなっていたのだ。

「普通」の彼女がそうやって歌うことは人間の生命を肯定することとイコールで、だから僕は彼女の音楽が大好きだ。
歴史的な名盤なんて発表してくれなくていい。彼女がそこにいて、唄ってくれているだけでもうじゅうぶんなのだ。




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# by fa60453 | 2009-06-22 03:06 | うんこレビュー

2009年上半期

6月も折り返し。いよいよ色々とヤバくなってきた。
いちいち感情に振り回されてたら大人にはなれないんだなーということがよくわかった笑。
が、ちょっと自分の思考がクリアになりつつある最近。まあ、ある種の開き直りですけど。
とにかく時間が無い!!というかお金が無い!!!!こともあり、音楽を手に入れる方法へのこだわりが薄くなってきた。
だって、探せばその辺に大体あんねんもん笑。でも、気に入ったものはちゃんと買ってます。

そんな2009年上半期に、何らかの方法で(笑)聞いた新譜↓

80kidz
the ARROWS
Animal Collective
Antony & The Johnsons
Bat For Lashes
Buck-Tick
The Bawdies
Camera Obscure
Franz Ferdinand
John Frusciante
Lillies and Remains
Lily Allen
Little Boots
The Fuan Maclean
Handsomeboy Technique
The Horrors
Ego-Wrappin' & The Gossip Of Jaxx
monobright
MUCC
Nirgilis
The Pains Of Being Pure At Heart
Passion Pit
Phoenix
Yeah Yeah Yeahs
U2
エレファントカシマシ
チャットモンチー
トクマルシューゴ
ユニコーン
曽我部恵一Band
坂本龍一
髭(HiGE)


去年のように毎月、毎週興奮する新曲が届けられてYou Tubeの前でニヤニヤしっぱなしだった去年に比べれば地味だし、飛び抜けた傑作はないかなー、という印象。でも日本は良いの結構あったかも。

ベストは強いて言えば、ホラーズ、エゴラッピン、パッションピット、アントニー、ソカバン(か、エレカシ)。
流行のブルックリン周辺はぶっ飛びすぎてて正直馴染めません。それよかエレカシ、ソカバンな気分でした。

それ以外では基本的には邦楽の古いのを漁ってました。RC、エレカシ、エンケン、YMO、細野さん、吉田美奈子、等々。

曲単位でよかったの↓
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# by fa60453 | 2009-06-18 18:39 | 雑記

Part Of Grace / Lillies and Remains















先日、バンドのメンバーに近しい知り合いの人にアルバムの感想を聞かれて、

「いやぁ~曲(ソングライティング)はほんとにセンス抜群ですわ日本屈指ですわ、すごいっすわ。」

「あ~、ほんとにぃ。」

「でもなんていうか、将来あっちの有名なプロデューサーとかにやってもらったら、もっととんでもないことになりそうっすね。」

と、プロダクションのエッジのなさというか、なんか室内楽的な響きがちょっとなあ、と遠まわしに言わせてもらいました。はは。

例えば2曲目の「The Fake」とか(ホンモノっぽい、とか「非邦楽」的意味あいにおいて)無茶苦茶カッコイイのに、聞こえが平面的でもったいないなー、と思っていたら、今日買ったSnoozerで田中亮太さんと小林祥晴さんがほぼ同じ意味のことを書いてらしたので、あ、そう思ったのはおれだけじゃないのね、と思った次第です。まあお金の問題とかもあるんだろうけど。

しかし、スカしたアルバムタイトルもさることながら、インタビューの鼻につく感じといい、アーティスト写真といい、もう死ぬほどカッコいいっす。メロメロ。ほんとにこの先楽しみ、っていうか、ファンです。もし今度ケント君の地元の駅で会うことがあったら握手してください笑。そんでどんどん足場広げて、どんどん噛みついていっちゃって下さい!


HMVの記事 全曲解説
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# by fa60453 | 2009-06-18 17:04 | うんこレビュー

キラキラ! / 曽我部恵一BAND














(昔書いたままほったらかしていた、え、どうなんこれ笑?というレビュー)

90年代のJ-POPシーンは完全に浮かれていた。だが、その反対側にはフィッシュマンズがいた。そして2000年代、J-POPシーンはゴミでもカスでもなく、チリ、ホコリ、ダニ、もしくはそれ以下のものになった。ファンタジーも問題提起もない、なんの根拠も無い現状肯定の雨あられ。
それに対して、アンダーグラウンドからの表立った反抗は無く、下北系ギターロックはひたすら内省、関西ゼロ世代はただあてなくわめきちらし、曽我部自身も言及したRaw Lifeなどのシーンはひたすら沈黙(エレクトロニカとか?よく知らんけど笑。)、誰もが声を荒げようとはしなかった。ポップシーンでは誰かが「そばにいるよ」とささやき、ロックはひたすら「あなた」を標榜し(ほぼ共振しているんじゃないか?と思うほど)、誰もが「君と僕」という殻にこもったまま、今も出てくる気配はない。

大雑把にいうと、「キラキラ!」は、その「ポップシーンへの反応としての内省」への、明確で決定的なカウンターなんじゃないかなと。
そして、それは「Love City」で提示したファンタジーと地続きでもあると。

おそらくこのままいけば2000年代サブカルチャーを代表する言葉は「空洞です」ということになると思うけど、いやいや、こっちにもありますよ、すごいのが。

こんな言葉を聞いたことがある。「ロックンロールとは、懸命に生きることで、生きていることを忘れてしまうための音楽だ」。そう、これは不況や就活やなじめないバイトや何やに脅かされようと、決して消えることのない命の光。視聴機で「天使」を聞いた瞬間、もう半泣きでした。



(関西ゼロ世代やRaw Lifeは、果たしてこういう認識でいいんでしょうか?うーん。でもこれについて何も書いてないのもどうかと思い、思い切って掲載してみました。)
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# by fa60453 | 2009-06-14 01:53 | うんこレビュー

ノイズ文化論、こころ、STUDIO VOICE

ここ最近やられた本。














ノイズ文化論(宮沢章夫)















こころ(夏目漱石)















STUDIO VOICE(相対性理論特集)



どの本も気持ちよく頭の中を掻き回してくれました。

「ノイズ文化論」は「ああーなるほどぉ」と膝をうちまくり、「こころ」は底の見えない谷を目の前に見せられた気分に、スタジオボイスは表紙見た瞬間に何故か「やられた…」と思いました。

相対性理論は10年後、00年代的なるものとしてそこに存在するんでしょうか?
うーん、なんか釈然としないな。

それより「Jポップ・アンダーグラウンド」が面白かったです。
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# by fa60453 | 2009-06-13 02:19 | 雑記

SENSUOUS SYNCHRONIZED SHOW / Cornelius














すげーーーーーーーーーーーーーーー!!

という感想。

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# by fa60453 | 2009-06-13 01:46 | うんこレビュー

ライフ / エレファントカシマシ















という訳で、最近はエレカシを聞き漁っているんですが、ディスコグラフィの中でも明らかに浮いてる印象の2002年作。

ブレイク~ガストロンジャーでの宮本完全独裁体制を経ての作品ということですが、不自然な程に穏やかな曲が並ぶ今作からは、明らかに燃え尽き症候群の匂いが笑。

「ひっきりなく車流れ行く音も/僕はもう慣れたのさ」

「転がったまま考えてたのさ/勝利のことやあなたのことを」

「さよなら遠い空/何故だろう少し優しくなって」


…とまあこんな感じである。

宮本がこの時「完全に預けた」というプロデューサーは小林武志氏。
なるほど、大人な佇まいの整然とした音作りは悪くない。でも、相手はエレカシだ。ちょっと整理されすぎじゃね?という気も。

ただ、作品としては嫌いじゃない。ニール・ヤングで言うところの「渚にて」のような位相にある作品。
秋のひっそりとした夜に聞きたい一枚。
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# by fa60453 | 2009-06-13 01:31 | うんこレビュー